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今夏の東京五輪の中止を求める会長声明を出しました!
「2021年夏の東京オリンピック・パラリンピックを中止し、市民のいのちと暮らしを守る新型コロナ対策の拡充を求めます!」
2021年5月21日
一般社団法人 社会福祉経営全国会議
会長 茨木 範宏
新型コロナウイルス感染症は、全国にこれまでにない勢いで広がり、変異株による感染者の重症化、入院期間の長期化などの影響もあり、医療のひっ迫、一部崩壊をまねいています。この影響で、介護・福祉の現場では、ほんらい医療機関のもと適切な治療を受けるべき感染者の多くが施設に留めおかれたり、在宅療養を余儀なくされる問題が生じています。また、在宅療養を担わざるをえない家族への家庭内感染が拡大し、深刻な状況となっています。
介護・福祉職員や保育士等は、日常的に濃密な接触が必要であるだけでなく、深刻な職員不足から過酷な労働環境の下で働き、そこにコロナ対策や感染者等への看護が求められています。福祉職員は、新型コロナウイルスへの恐怖と向きあいながら、希望しても入院できない陽性者を施設で亡くならせてはならないと、看病・支援に奮闘しています。会員法人で集団感染が発生した施設では、「あの部屋に行くとコロナが見える」と身体的・精神的に追い詰められながらも、「感染した入所者のいのちと暮らしを守らなくては」と職務をまっとうする職員の姿が報告されています。
しかし、こうした問題を是正するための医療体制・病床の拡充、医師や看護師の確保、PCR検査の拡大等は遅々として進んでいません。第三波、第四波の感染拡大により、高齢者や障害者は人工呼吸器など延命治療をしない条件を承諾しなければ入院できない「いのちの選別」という事態まで起きているのが現状です。
先日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が、日本看護協会に対して大会期間中の医療スタッフとして看護師500人の確保を要請する文書を送った旨の報道がありました。さらに組織委員会は、大会を安全に開催するために、期間中の医療スタッフは約1万人必要と想定しているとされています。
オリンピック・パラリンピックは、努力を積み重ねてきたアスリートのみならず、観る者に勇気と感動を与えるスポーツの最高峰であり、「平和の祭典」です。多くの国民が安心・安全のなかでこの祭典を楽しみ・喜びあいたいと望んでいます。しかし、「いのちの選別」が現実化し、ワクチン接種の遅れも指摘されている中にあって、医療スタッフが大会に割かれれば、さらなる医療崩壊が生じ、これまで以上に市民のいのちと暮らしが危険にさらされることになります。
国内のみならず世界的にも「中止・延期」の声が広がっています。国は、真の意味で「平和の祭典」が可能となる時期を見誤ることなく、今夏のオリンピック・パラリンピック中止の判断を早急にするべきです。そして政府、東京都、全国の自治体が、市民の声を真摯に受け止め、コロナ感染症収束に向けた対策に集中し、市民のいのちと暮らしを守るため、エビデンスに基づいた計画性と実効性のある施策を講ずることを強く求めます。